AMLSを簡単に説明
AMLSとはAdvanced Medical Life Support の略です。AMLSコースはNAEMT(米国救命士協会)認定コースで、現場で内因性障害のある患者の評価をして緊急度や病態を判断し、可能な限り状態の安定を図りながら、適切な施設へ搬送し収容する事を目的にしています。受講条件は研修医、看護師、医師、救急隊員のいずれかで、無事コースを終えると4年間有効のAMLS修了証がもらえます。
参考 :https://jsish.jp/naemt/
AMLSでは何をするのか
私の受講したプログラムは2日間でスライドと模擬患者によるシナリオ演習、実技試験、筆記試験がありました。スライドと模擬患者によるシナリオ演習では
- Neurological(神経)
- Respiratory(呼吸)
- Shock(ショック)
- Chest Discomfort(胸痛)
- Endocrine/Metabolic/Environmental(内分泌/代謝/環境因子)
- Abdominal Discomfort(腹痛)
- Infection(感染症)
- Toxicology(中毒)
※( )の中はわかりやすいように意訳しました
の8つのケースを学びました。Assessment Pathwayという方法を用いて,患者状態の評価,優先順位を念頭に置いた鑑別診断,迅速な安定化治療(蘇生)の方法を学びます。実技試験はシナリオ演習で学んだことをテストします。筆記試験の内容は部外秘だそうです。問題も解答も回収されます。
Assessment Pathwayのやり方
流れとしては
- 初期観察(Initial Observation)
- 初期評価、第一印象(First Impression)
- 詳細評価(Detailed Assessment)
- 鑑別診断の精度を上げる(Refine the Differential Diagnosis)
- 継続的なマネジメント(Ongoing Management)
という感じです。
まず1.初期観察(Initial Observation)です。ここで大事なのは現場の安全確認と感染予防処置の2つです。現場は患者自宅、外出先、病院の処置室などが想定されています。患者に近ずく前にガスの匂いがしないか、灯油を被ったりしていないか、薬の袋が散乱していないか、交通量の多い道路ではないか、野次馬の有無などをテェックします。感染予防処置も重要です。救助に行ったのに患者になってしまっては意味がありません。この2つが重要視されていました。安全を確保したら患者に近付き名前、性別、主訴を聴取します。その際、
- 意識
- 気道(A:Airway)
- 呼吸(B:Breathing)
- 循環(C:Circulation)
を確認します。意識は「AVPU」で評価します。AVPUは
- A:Alert 覚醒して見当識あり
- V:Verval 言葉により反応するが見当識なし
- P:Pain 痛みにより反応
- U:Unresponsive 言葉にも痛みにも反応しない
で評価します。医療従事者に馴染みのあるJCS、GCSは意識障害があった場合に詳細評価(Detailed Assessment)で評価するのがいいそうです。A以外は異常(意識障害)です。次に気道、呼吸、循環(いわゆるABC)です。喋れていたらAは正常(気道開通)、喋れなかったら異常(気道閉塞)、Bでは努力呼吸、頻呼吸があれば異常(呼吸不全)、Cでは速脈、脈の触知不良、皮膚の冷感、湿潤、2秒<CRTがあれば異常(ショック)としていました。
次に2.初期評価、第一印象(First Impression)です。初期観察(Initial Observation)の状態をもとに患者をsickかnot sickに診断します。意識、気道、呼吸、循環のどれか1つでも異常があればsickと判断します。sickと判断するまでの時間をいかに短縮させるかもぽいんとです。sickと判断したら今できる処置(酸素投与[流量や器具(鼻カニュラ、リザーバ)も決める]、ルート[キープなのかボーラスなのか]、モニターの装着)を行い、主訴などから現時点での鑑別診断を挙げます。ポイントは見逃すと致死的になる疾患を挙げておくことです。
そして3.詳細評価(Detailed Assessment)に進みます。「OPQRST」、「SAMPLER」を用いて病歴を聴取します。
- O :Onset(発症時刻)
- P :Palliation/Provocation(寛解/増悪要因)
- Q :Quality(性状) 痛みが鋭い、重苦しい、チクチク、波があるなど
- R :Radiation(放散) 痛みが移動する、場所が変わるかなど
- S :Severity(程度) 1番痛い時を10とすると 0-10でどれくらいか
- T :Time(経過)
- 随伴症状 :その他に症状があるか
- S :Sign & Symptoms(症状と兆候)
- A :Allergies(アレルギー)
- M :Medications(常用薬)
- P :Past medical history(既往歴)
- L :Last oral intake(最終飲食時間)
- E :Event(先行イベント)
- R :Risk factors(リスク要因)喫煙、飲酒、高血圧、糖尿病、精神疾患など
さらに身体診察、バイタルサインの確認します。身体診察では聴診、頸静脈の怒張、皮膚色、瞳孔、対光反射、髄膜刺激情報などを確認します。バイタルサインでは呼吸数、呼吸の左右左、脈拍数、血圧、SpO2、血糖などを確認します。これらの情報から鑑別にあげた疾患を除外しながら疑わしい疾患を絞っていきます。
次は4.鑑別診断の精度を上げる(Refine the Differential Diagnosis)です。これまでの情報を整理して致死的(Life Threatening)、重篤(Critical)、緊急性なし(Non-emergent)なのか判断します。
2.初期評価、第一印象、3.詳細評価、4.鑑別診断の精度を上げるは継時的に変化しうるので継続的に再評価をします。
そして5.継続的なマネジメント(Ongoing Management)です。継続的に評価すべきこと(バイタルなど)、治療、1次-3次のどの病院に搬送すべきかを考えます。それを上級医や搬送先に「SBAR」を用いて説明します。
- S :Situation(今どのような状況か)
- B :Background(状況の背景)
- A :Assessment(状況の評価)
- R :Request(どうしてもらいたいか)
受講した感想
二日間スケジュールが濃縮されているので結構疲れました。当直などで初期救急の対応で判断が迫られることがあるのでとてもためになりました。意識していないと人はすぐ忘れるので普段の診療に取り入れられるものは取り入れて自分の身になるようにしたいです。
おまけ
胸痛鑑別診断で見逃してはいけない致死的疾患は
- ACS
- PE
- 大動脈解離
- 緊張性気胸
- 特発性食道破裂
というのはけっこう使えそうな知識だと思いました!
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